本誌記者 馮建華
今年4月9日、中国財政部の張通部長補佐は、「財政部は予算の公開にさらに力を入れ、民衆が関心を寄せる、民衆の切実な利益に関わる問題を政務公開の重点とし、財政予算情報の公開を大きく促し、公開の範囲を拡大していく」との考えを示した。
張補佐によると、3月20日、財政部のウェブサイトは全国人民代表大会が審議・採択した2009年度中央財政予算案を初めて社会に正式に公表した。これは財政部が「中華人民共和国政府情報公開条例」の要求を徹底させ、実行し、予算の公開性・透明性を推進するための重要な措置であるという。
2008年5月1日、10年にわたって討議された「政府情報公開条例」(以下「条例」)が正式に実施された。これは中国の立法史上公民の知る権利を専門に保障した最初の法規だと法学界に評価されている。
「条例」は、各クラス行政機関は毎年3月31日までに当該行政機関の政府情報公開活動の年度報告を発表する必要があると規定。このため、3月31日までに、各クラス行政機関のほとんどが2008年度政府の情報公開活動報告を公表した。
ガラス張り政府構築のための法的保障
改革開放以来30年、中国は個人の権利と国家権力との均衡を徐々に重んずるようになり、現代市場経済を確立し、発展させると同時に、行政公開を推進し、法による行政を全面的に推し進めてきた。「情報公開」や「ガラス張りの政府」という現代的法治観念はますます重要視されるようになってきた。
「条例」起草グループのメンバー、中国人民大学法学院の莫于川教授は「根本的に言えば、こうした変化は市場経済が一種の民主経済の形態であるためで、経済社会の発展と密接に関わる行政管理システムとサービス・システムにも改革と整備が必要だからだ」と指摘。
情報公開はガラス張りの政府と法治政府を構築するための要求である。2004年、中国は「法による行政を全面的に推進する実施綱要」を発表。これは中国の行政・法治建設を指導する綱領的文書であり、政府の情報公開と法治建設に具体的な要求を提出した。「条例」はまさしく「綱要」が確立したガラス張りの政府と法治政府の構築という大目標に対する立法的保障である。
1998年に立法の検討課題として設定されてから2008年5月の正式な実施に至るまで、「条例」は10年の歩みを経てきた。中国政府の情報公開制度の立法は地方での推進を先行させ、経験を積み重ねた後、全国で推し広げるという方法を取っている。
莫教授は、「早いうちから、多くの政府機関や企業・事業部門は情報公開の面で積極的に模索しており、かつては『村務公開』、『社務公開』、『警務公開』のブームが起きたこともある。一部の地方はインターネットを充分に利用して政府のポータルサイトを設立、整備したうえで政務公開を際立たせ、社会や民衆とのコミュニケーションを強めた」と指摘。
2002年11月、広州市政府は「広州市政府情報公開規定」を制定し、翌年1月1月から施行。これは中国初の政府情報公開を規範化させた法規である。それに続いて1年後、「上海市政府情報公開規定」も公布。「条例」公布前、31の省・自治区・直轄市でさまざまな形式の政務公開制度が確立された。
2006年1月1日、3カ月にわたってテスト運営された中央政府ポータルサイトが正式に開通した。現在、全国で80%の県クラス以上の政府部門がポータルサイトを設立した。公民はサイトを通じて、もとは閉ざされていた政府情報を入手することができ、知る権利、参加する権利、監督する権利などの権利も行使できるようになった。
中国社会科学院の周漢華研究員は、「政府情報公開制度や形式の確立に比べて、もっと深い変化は、政府が情報公開の観念を転換させたことだ」と指摘している。これについて、同氏は「1998年には、『政府情報公開』というのは敏感な言葉だった。私が率いていた課題グループも『政府情報資源の開発・利用・管理グループ』と呼ぶほかなかった。ところが、現在では『情報公開』はすでに社会各界によく知られた言葉となった。2008年8月、北京語言大学などが当年度の国内の時事・政治における十大流行語を選定した結果、『政府情報公開』は4位にランクされた」と説明。
周研究員はさらに、「『条例』は2007年4月5日に正式に公表された後、中国社会でこれまで以上に強い反響を引き起した。その最大の特徴は情報公開を政府の法定的義務へと変えたことで、もはや一種の恩恵ではないという点だ。これは以前の政府活動の構想と方法を変える革命となるだろう」と指摘している。
情報公開と秘密保持との「かねあい」
「条例」は政府情報公開の範囲を規定している。第2章第9条には、公民、法人とその他の組織の切実な利益に関わる情報、社会や民衆が幅広く知る必要または関与する必要がある情報、行政機関の設置、職能、執務過程などを反映した情報は、行政機関が自発的に公開すべきである、と規定している。
重点的に公開される政府情報についても、「条例」は明確に規定している。例えば、第2章第10条には大型建設プロジェクトの批准と実行状況、突発的な事件に対する緊急対応プラン、早期警戒情報と対応状況などを含む11種の情報が列挙されている。
「条例」は、国家機密、個人のプライバシー、商業秘密以外の政府情報は、原則として社会に公開する必要があると定めている。各クラス行政機関は法で定める重点範囲に基づき、自発的に政府情報を公開しなくてはならず、公民や法人は自身の必要に基づき、政府情報の取得を申請することができる。政府部門が法に基づく情報公開義務を履行しない場合には、通報、行政再討議、行政訴訟などを通じて監督し、責任を追及する。
また、注意に値するのは、「条例」が行政機関に適用されるだけでなく、公共事務管理の職能をもつ企業・事業部門にも適用されることだ。
「条例」は「国家秘密に関わる情報を公開できないほか、行政機関はプライバシーに関わる政府情報を公開してはならない」と特に規定している。ところが、何が国家秘密であるのか、何がプライバシーであるのかについては、なかなか明確には確定できないものだ。これは往々にして関係部門が情報公開を拒否する理由となっている。実際のところ、これも「条例」の立法過程における最大の争点となった。
メディアの報道によると、ある都市の市民は1年に現地の企画局に700件余りの情報公開申請を提出したが、その中の4分の3が「秘密」を理由に拒否された。現在、不動産価格の急騰が国民生活に影響する社会問題となっている。ここ数年、国民もしくは公益組織が不動産コストの公開を求めているものの、一部地方政府の職能部門は「秘密」を理由に公開しないのが実情だ。
同様な現象は環境保全分野でも発生している。汚染の深刻な地区では被害を受けた民衆や環境保護組織が汚染情報の公開を求める声が非常に強いが、一部の部門・機関は往々にして「秘密」を理由にこれを阻んでいる。
2008年5月12日、中国青年報とあるウェブサイトが共同で行ったアンケートによると、98.4%の人は「政府情報の獲得は公民が持つべき権利」と認めており、民衆が最も期待しているのは政府が高官の財産状況を公開することだという。
政府高官の財産状況が公開できないプライバシーに属するかどうかについて、公権を握る高官は財産を公開し、監督を受けるべきだと社会は普遍的に認めているが、「個人のプライバシー」という言い方は一部の地区では依然として大きな支持を得ている。そのため、長年求められてきた高官の財産申告法など「ガラス張り法案」の実施も遅々として実質的な進展をとげていない。
検証を受ける
政府情報の閉鎖方式から公開方式への転換は公共の危機や突発事件に対する措置に現われている。2008年、中国では多くの厄介な事件が発生し、政府の情報公開に厳しい試練をもたらした。
2008年5月12日、四川省汶川でマグニチュード8.0の大地震が発生した。これは「政府情報公開条例」実施後、中国が遭遇した最初の特大災害であり、政府の情報公開が検証される絶好の機会となった。実際には、地震発生直後の十数分間で、中国政府の関係部門は地震発生の地区、震度および政府が取った救助措置などについて、メディアを通じて情報を発表した。いま振り返ってみると、中国政府が今回の地震対応に成功した経験の一つは情報を公開したことであり、特に最初の肝心な時期に海外メディアに取材の便宜を図ったことである。大まかな統計によると、地震発生後最初の時期に被災地に入って取材を行った海外メディアは200社以上だった。地震の情報が速やかにかつ全面的に公開されたため、今回の災害は国際社会からの幅広い関心を集め、迅速かつ有効な救助が展開された。
国務院法制弁公室行政復議司の呂錫偉司長は、「汶川大地震の救助活動では、施行されたばかりの『条例』が重要な役割を演じ、積極的な役目を果たし、実践の検証を受けた」と指摘。
イギリスの「ガーディアン」紙は、「政府系メディアは最新情報を発表し、最新の死亡者数を提供し続けている」と報道。
2008年8月に北京で開かれたオリンピックは政府の情報公開にとって、もう1つの全面的な試練であった。北京オリンピック組織委員会の統計によると、北京五輪の報道活動に参加した海外記者は登録、非登録を含めて約2万5000人、そのうちAP通信、ロイター通信のような国際的な主流メディアの記者は300人以上で、中国国内の主流メディアを上回った。これらの海外メディアが関心を持つのはオリンピック競技だけでなく、政治、環境保全、人権、宗教などすべてのやや敏感な分野にわたっている。
海外メディアからの圧力に直面して、中国の関係者は冷静な認識を持つとともに、「国際ルールの順守」に努めている。2006年11月1日、温家宝総理は「北京五輪および準備期間中における外国人記者の取材に関する規定」に調印した。その中の第6条は、「外国人記者は中国で取材を行う場合、取材対象が所属する団体と個人の同意のみで取材できる」と規定。
これについては、外国人記者は彼らに一貫している思考パターンとやり方で負の側面の報道を行うに違いない、そしてこれは中国のイメージを損なうだろう、と懸念する人もたくさんいた。
中国新聞出版総署の柳斌傑署長は「われわれには自信がある。30年の改革開放を経て、中国はこれに耐えられる能力がある」と公に表明。
海外世論は「中国政府の情報公開の加速はオリンピックの圧力によるものだ」としている。これについて、中国の有名な外交官で北京外交学院の元学長である呉建民氏は、「中国はグローバル化の進行過程でより自信をつけた。中国の情報を徐々に公開してきた措置は、30年にわたる改革開放の過程の中で見るべきだ。改革開放のたゆまぬ深化につれて、中国もたゆまず進歩しているのだ」と指摘している。
「北京週報日本語版」2009年5月26日